SBI新生銀行が上場|本日の振り返りと今後の展望を考察します
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SBI新生銀行が2023年以来の再上場
SBI新生銀行(8303)は、「銀行とノンバンクの機能を併せ持つ総合金融サービス」を主な事業としています。1952年に日本長期信用銀行として設立され、倒産や国有化を経て2000年に「新生銀行」として再出発しました。2021年にはSBIホールディングスの子会社となり、2023年に「SBI新生銀行」へ名称を変更しています。インターネットバンキングを強みとしつつ、全国に23店舗を展開し、利用者からは各種手数料の安さや預金金利の高さが評価されています。2025年9月には、預金残高がSBI証券の買付余力に自動反映される新サービス「SBIハイパー預金」を開始しました。実は同行は2023年に上場廃止しています。当時は旧日本長期信用銀行時代の公的資金の返済という課題があり、上場廃止は返済への自由度を高める狙いがありました。2025年7月に完済した上での再上場となります。
本日の株価推移
SBI新生銀行は本日プライム市場に新規上場し、公開価格1450円を9.4%上回る初値1586円をつけました。その後は一時1680円まで上昇する場面も見られ、引けにかけてはやや下落する場面も見られたものの、終値は1623円と前日比12%高と上々の滑り出しとなりました。本日の値動きとしては公開規模が今年2番目の大きさであるほか、前日のNSグループが公募割れスタートとなったこともあり、落ち着いた出足となっている格好でしたが、公的資金完済による経営自由度の高まり、日銀の金融正常化を進める姿勢などは注目点が集まったほか、「第4のメガバンク構想」やステーブルコイン関連事業進展など材料も豊富とされていることや、上場前段階で同社株を農林中央金庫や米投資会社のKKRが購入したこと、カタール投資庁やM&Gインベストメント・マネジメント、ブラックロックなどもIPOでの株式購入に関心を表明しており、一般投資家は10倍程度、国内機関投資家は1桁後半、海外機関投資家は10倍程度の需要があったことも初値を支えた要因であったと考えられます。
本日の上場を経て、公募と売り出しの合計額である市場吸収金額(IPO規模、オーバーアロットメント分を除く)は3219億円と、ことしの国内案件ではJX金属に次ぐ大きさとなったほか、公開価格で計算した時価総額、1兆2985億円から1兆4200億円となり、今年の新規株式公開(IPO)で最大規模となりました。
同社の将来展望
同社の展望に関してですが、川島克哉社長は会見で「新生銀行時とは、大きく中身も経営方針も変わった」と話し、SBIホールディングス傘下で地方銀行との連携が着実に進んできたとした上で、今回の上場を契機に、成長分野への投資を一段と加速させる考えを示しております。また、同社は、法人営業やストラクチャードファイナンス、住宅ローンなど4つの注力分野を掲げております。これらの分野にはPBRなどの指標で見ても割安に放置されている業種が多く、投資機会が依然として豊富にあるとの認識を示し、インオーガニック投資についても、機会があれば積極的に取り組む方針と発言しております。加えて、川島氏は、IPO時に親引けとして出資している農林中央金庫と米投資ファンドのKKRによる業務提携にも言及しており、第四のメガバンク構想や地方創生の観点から、農業分野への資金循環や専門的な運用能力の提供で意義があると説明しております。業績については25年4─9月期の連結決算は住宅ローンや融資関連手数料のほか、ベンチャーへの投資回収などが利益を押し上げ純利益が前年同期比56%増の693億円で、2001年度以来の高水準だった勢いを引き継ぎ、2026年3月期の連結純利益が前期比18.3%増の1000億円になる見通しを明らかにしております。業種柄大きな変動が生じにくいことから今後も緩やかな成長が期待できるほか、日銀による金融政策は利上げ路線であることからも金利上昇による恩恵を受けることが期待されます。