安倍元首相銃撃事件も株価への影響は限定的
みなさんこんばんは、猫組長です。
まずはじめに、ご逝去された安倍晋三さんへ謹んで哀悼の意を表します。
参議院選挙の期間中、応援演説の最中に日本の元首相で現職議員が暗殺されるなど誰も想像し得なかったでしょう。新型コロナによる世界的なパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻、そして安倍元首相の暗殺と私たちは歴史の岐路に立っているようです。
それでは先週のマーケットを振り返りつつ、今週の相場を考えてみましょう。
ニューヨーク市場
4日:独立記念日のため休場
5日:景気減速懸念で欧州市場が下落したことでニューヨーク市場も反落で始まりました。WTI原油先物価格が1バレル97ドル台に下落しコモデティ価格も軒並み下げる展開する中で、米10年債利回りが2.78%まで低下。ダウ平均株価の下げ幅は一時700ドルを超える場面もありましたが、午後からは徐々に値を戻す動きとなり、長期金利低下で高PERのハイテク株比率が高いNASDAQは大幅上昇しました。ダウ平均株価終値は▼129.44の30,967.82ドル
6日:6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨公表を午後に控えたニューヨーク市場は、寄り付きから警戒感の感じられる展開でした。公表された議事録要旨に目新しいものは無く、タカ派的と捉えられる内容ではありませんでした。リセッションへの言及が無かったことも安心感に繋がり買いが進んだものの上値の重い展開でした。ダウ平均株価終値は△69.86の31,037.68ドル
7日:FOMC議事録公表から金融引き締めと景気後退への懸念が和らいだニューヨーク市場は4日続伸。中国政府が2200億ドルの特別債発行を地方政府へ許可したことも景気対策への期待として好感されました。FRBメンバーのインフレ抑制に対する見通しなども市場に安心感を広めました。ダウ平均株価終値は△346.87の31,384.55ドル
8日:6月非農業部門雇用は+37.2万人(予想+25万人)と大幅上昇、米景気は力強く雇用の堅調さが示されましたが、これでFRB(米連邦公開市場委員会)が金融引き締めを強化するとの見方となり売りが先行。ダウ平均株価の下げ幅は一時170ドルを超えました。売り一巡後は雇用統計の堅調さから景気後退への懸念が薄れ、今度は買い優勢の展開となりました。ダウ平均株価は一時120ドル超上昇する場面も見られましたが、終日強弱の入り混じった相場になりました。ダウ平均株価終値は▼46.40の31,338.15ドル、SP500は▼3.24の3,899.38ポイント、NASDAQは13.96の11,635.31ポイント
東京市場
4日:先週1週間で1400円あまり下落していた日経平均株価は、前週末のニューヨーク市場が長期金利低下などで上昇した流れを受けた展開でした。金利低下で割安感の出た高PER(株価収益率)銘柄を中心に買いが進み、日経平均株価の上げ幅は一時300円を超えました。しかし、買い一巡の後は伸び悩み26,000円を割り込む場面も見られるなど、積極的に上値を追う展開とはなりませんでした。日経平均株価終値は△218.19の26,153.81円
5日:外国為替市場で円安が進んだことや米株価指数先物の上昇が材料となり買い優勢の展開でした。日経平均株価の上げ幅は一時370円を超える場面もありましたが、26,500近辺では売りも活発で上値は限定的でした。日経平均株価終値は△269.66の26,423.47円
6日:欧州市場が景気減速懸念で下落、ニューヨーク市場もボラティリティの高い相場展開だったことで東京市場もセンチメントは悪化、日経平均株価は3日ぶりの反落となりました。その反面、米長期金利の低下を受けてグロース株は買われ、マザーズ指数とグロースCoreは上昇して引けました。日経平均株価終値は▼315.82の26,107.65円
7日:FOMC議事録公表で警戒感が和らぎ上昇したニューヨーク市場の流れを引き継いだ東京市場。ディフェンシブ銘柄が物色される一方で、このところ下落の大きかった半導体関連銘柄も買われました。米株価指数先物が上昇したことも好感され、日経平均株価の上げ幅は一時400円を超える場面も見られましたが、26,500円が意識されると売りに押される展開でした。日経平均株価終値は△382.88の26,490.53円
8日:金融引き締めと景気後退への警戒感が和らぎ続伸したニューヨーク市場を引き継いだ東京市場、買い先行で日経平均株価の上げ幅は一時390円を超える場面もありました。しかし、前引け後に安倍元首相が演説中に銃撃されたとの報道で後場から売りが先行、上げ幅を一気に縮小させました。日経平均株価終値は△26.66の26,517.19円、TOPIXは△5.10の1,887.43
安倍元首相暗殺と参議院選挙
安倍元首相銃撃という衝撃的な第一報がもたらされたのは、東京市場の前場が終わった直後でした。リスクオフに加え金融緩和政策の転換が意識され、外国為替市場で136円台前半から135.60円まで円高が進行しました。後場に入ると日経平均株価もリスクオフムード、26,882円の高値から上げ幅を縮小して行きました。
安倍元首相銃撃事件が日経平均株価に与える影響は限定的だと考えます。事件当日の8日後場で350円ほど下落したことでショックは織り込んだものと思います。安倍元首相の死去で、長期的には金融緩和政策への影響が懸念されるかも知れません。しかし、短期的には今日10日の参議院選挙で自民党にとって有利に働き、長期安定政権・積極財政という期待の方が大きいでしょう。
ポジティブな材料とリスク要因が拮抗
FRBによる金融引き締めとリセッションへの過度な警戒感は後退しています。米10年債利回りは3.08%と落ち着き、WTI原油先物価格も104ドル台後半まで戻しました。8日発表の米6月雇用統計も非農業部門雇用者数が前月比37.2万人増と市場予想(同26.5万人増)を大幅に上回り、雇用情勢はタイトながらも米経済の力強さを示しています。しかし、この経済の力強さはFRBによる金融引き締めを正当化・加速化させる理由となるでしょう。
13日には米6月CPI(消費者物価指数)の発表があります。5月の前年同月比8.6%増よりも上昇率が高まるという見方が市場コンセンサスです。上昇率が増加しても0.2%~0.3%程度だと思いますので、それほどの懸念材料では無いでしょう。それでも予想外の数字が出ればネガティブです。逆に上昇率が鈍化すればポジティブな材料となります。
中国経済と中国国内の新型コロナ感染状況も気になります。中国財政省が地方政府に対して約2200億ドル規模の特別債発行を許可することを検討しているようです。景気対策としてインフラ投資を加速させる狙いです。その一方、中国都市部で新型コロナの感染者が増加傾向にあり、再びロックダウンの可能性が出てきました。中国だけでなく日本を含め世界的に感染者が再拡大しており、その経済的影響に注意が必要でしょう。
今週の相場見通し
日経平均株価は前週末の安倍ショックからの反発が期待できます。選挙結果にもよりますが、現時点で自民党優勢に変わりなく政情安定で安心感が広がるでしょう。26,000円の底堅さも26,500円に切り上がったと考えてよいと思います。目先は26,700円水準の25MAを焦点とした相場展開が考えられますが、ここは比較的簡単に上抜けるものと見ています。その上に75MAの26,950円が控えており、節目の27,000円と併せて強いレジスタンスになりそうです。この水準を上抜くには、ニューヨーク市場での株高追随が必要でしょう。13日発表の米6月CPIや米企業の決算が材料になると思われ、それまでは強弱入り混じりながらも底堅い展開と予想しています。
編集後記
安倍元首相が凶弾に倒れ亡くなってから、予想していたとおりSNS上で陰謀説が湧いています。著名人が亡くなるとそれが陰謀でないと気が済まない人がたくさんいますね。もう日常生活がまともに送れているのか心配になります。
合理的・論理的に考えれば、陰謀で元首相の現職議員を暗殺するなら容疑者の山上徹也など使わないと分かるはずです。ましてや国家規模の暗殺ともなればもっと緻密で鮮やかな仕事をします。手製の銃など使わず射殺なら遠くからゴルゴ13みたいな殺し屋が狙撃銃で撃ちます。
そもそも、暗殺するメリットとリスクのバランスが取れません。また、奈良市在住41歳の無職プータローなんかに元首相の暗殺を依頼するわけがないのです。白昼堂々と演説中の現職議員(それも元首相)を襲撃すれば必ずその場で逮捕されます。そしてこの手の犯人は逮捕されたら必ず自供します。暗殺の指示があればそれも自供するのでリスクしかないのです。
それにしても警備に当たっていた奈良県警とSPのお粗末さには呆れます。映像で観ると後ろからの攻撃を全く警戒していません。暴力団のヒットマンが敵を襲撃する際には絶対に背後からは撃ちません。背後から打つことを卑怯とするからです。上部から「正面から狙え」と指示される場合もありますが、不文律として背後からは狙わないというルールがあるのです。
暴力団のヒットマンが相手を狙うのは建物から出てくる時、特にエレベーターから出る瞬間と車の乗り降りをする時です。前方への注意が途切れ防御能力が低下する場面ですね。だからヒットマンはその場面を想定して襲撃の訓練をします。それから、抗争になってからの襲撃は警察の警戒などもあるため、走る車の中から拳銃を撃つという想定をします。この場合、高速道路などを走りながら道路標識を撃つ訓練をします。もし小さい穴の空いた標識を見かけたら、それはヒットマンが訓練した痕跡かも知れません。
猫組長TIMES 次号は7月13日です。
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