CPI+7.5%でFFレート0.25%の異常事態
今週の相場見通し

FRB(米連邦準備理事会)の金融引き締めに対する姿勢を窺いながら、警戒感を強める展開が続いています。ウクライナ情勢の緊迫も高まり、マーケットは完全にリスクオフへ傾きました
猫組長 2022.02.13
誰でも

1月の米消費者物価指数(CPI)前月比+7.5%と市場予想を上回り、伸び率は1982年以来およそ40年ぶりとなる大きさでした。インフレの抑制に焦るFRBが金融引き締めをさらに加速させるとの見方から、市場参加者は50bpの利上げも織り込み始めたようです。FRBによる緊急利上げへの警戒感も出ていますが、それはないだろうと思います。ゴールドマン・サックスは今年25bp×7回の利上げを予想していますが、現時点でのインフレ率と雇用情勢を考えれば、その数字では追いつきません。とは言え、突然の50bp利上げはインパクトが強すぎるので、途中から50bpに上げてくるのではないでしょうか。

先週は日経平均株価を27,500円を意識しながら27,800円までという見通しでしたが、週末終値は27,696.08円で引けています。それでは先週のマーケットを振り返りつつ今週の相場を考えてみましょう。前回記事もぜひご参考にしてください。

Bloomberg
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ニューヨーク市場

7日:FRB(米連邦準備理事会)の金融引き締めに対する警戒感が広がる中、新型コロナの新規感染者が減少傾向にあることから相場は拮抗。経済再開期待で旅行・レジャー関連銘柄や、景気敏感株のキャタピラー:CATなどが買われました。米長期金利が1.9%台と高止まりしていることから高PER(株価収益率)のハイテク株が売られ、相場の強弱を相殺させる展開となりました。ダウ平均株価終値は△1.39の25,091.13ドル

8日:米長期金利が一時1.97%まで上昇、金利先高感から収益性が向上するという思惑で金融株のバンク・オブ・アメリカ:BACやJPモルガン・チェース:JPMなどが買われました。クレジットカードのアメリカン・エキスプレス:AXPは前日に続き好調でした。ダウ平均株価終値は△371.65の35,462.78ドル

9日:1.97%まで上昇していた米長期金利が落ち着いたことから、高PER(株価収益率)のハイテク株が買い戻される展開でした。米国内の新型コロナ新規感染者がピークから3分の1にまで減少したことで消費関連銘柄も買われました。ウォルト・ディズニー:DISは3%上昇の147ドルです。ダウ平均終値は△305.28の35,768.06ドル

10日:1月の米消費者物価指数(CPI)が前月比+7.5%と40年ぶりの伸び率を示したことで、FRBが金融引き締めを加速させるとの見方から売り一色の展開。金利先高感から高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に値を下げました。アップル:AAPLが3%、マイクロソフト:MSFTが2%の下落です。ダウ平均株価終値は▼536.47の35,241.59ドル

11日:FRB(米連邦準備理事会)による金融引き締めで0.5%(50bp)の利上げ観測が出る中で、ロシアのウクライナ侵攻への警戒感が急激に高まりました。各国がウクライナからの自国民退避を促すなど、いつ侵攻が始まってもおかしくない情勢です。VI(変動性指数)は一時30.9まで上昇、マーケットは完全にリスクオフムードに傾きダウ平均株価は2日で1,000ドルの下落となりました。ダウ平均株価終値は▼503.53の34,738.06ドル、S&P500は▼85.44の4,418.64ポイント、NASDAQは▼394.49の13,791.15ポイント

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東京市場

7日:米国のインフレ率高進が進み長期金利が上昇している局面で、FRB(米連邦準備理事会)が金融引き締めを加速させるとの見方から売り優勢の展開でした。高PER(株価収益率)銘柄や半導体、海運株など幅広い銘柄が売られ、日経平均株価は一時300円超下げる場面も見られました。日経平均株価終値は▼191.12の27,248.87円

8日:米国での新型コロナによる新規感染者が減少傾向であること、国内でも新規感染者がピークアウトに見られることなどから買い優勢の展開。日経平均株価の上げ幅は一時200円を超える場面もありましたが、27,500円が意識されると利益確定売りに押されました。日経平均株価終値は△35.65の27,284.52円

9日:前日のニューヨーク市場で米主要株価指数が全て上昇したことで東京市場も強気な展開でした。決算発表を材料にした買いが目立ったほか、米長期金利の上昇を受けて金融株も買われました。インフレ懸念の警戒感が続く米国で、10日に発表される消費者物価指数(CPI)の結果を見極めたいという思惑から、積極的に上値を試すことはありませんでした。日経平均株価終値は△295.35の27,579.87円

10日:東京市場は3連休前にも関わらず買い先行のスタートでした。日経平均株価の上げ幅は一時300円を超える場面もありましたが、買い一巡後は利益確定売りと連休前のポジション調整に押される展開でした。日経平均株価は3日続伸で3週間ぶりの高値です。日経平均株価終値は△116.21の27,696.08円

11日:建国記念の日で東京市場は休場

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今週の相場見通し

喫緊のリスクはなんと言ってもロシアによるウクライナへの侵攻です。各国が自国民へウクライナからの退避を求めるなど、いつ戦争が始まってもおかしくない状況です、しかし、米国政府によるロシアのウクライナ侵攻に対するアナウンスは少し過敏で違和感があります。おそらく、ロシアへの牽制という意味合いもあるのかも知れません。少なくとも平和の祭典と言われるオリンピック開催中に、ロシアが軍事行動をとることはないでしょう。どちらせよ、ウクライナ侵攻がある場合、無い場合、この2つのシナリオを前提に、リスクコントロールすることが当面は重要かと思います。

東京市場、日経平均は週末の金曜日が休場だったため、ニューヨーク市場の下落を織り込んでいません。日足チャートでは25MAに乗り5MAが下をサポートする形になっています。通常であればテクニカル的に見てここから75MAの28,500を目指す展開が予想されますが、現状では希望的観測にしか過ぎません。ウクライナ情勢にFRBの金融引き締め動向と不確定要素が重複していて相場の予測が非常に困難です。現段階での予測が数分後のニュースと事態の展開で変わるからです。

現時点で今週の相場を考えてみると、週初の日経平均株価は前週末のニューヨーク市場を評価する動きで下落、5MAを試しにいくものと思われます。その後はニューヨーク市場の自律反発に反応する形で一旦は戻ろうとするのでは無いでしょうか。いずれもウクライナ情勢とFRBの動向次第で上下どちらへも動きやすい状況です。それでも、全体的なリスクオフムードは強まるものと思われますので、いずれ1月27日につけた26,170円を割りに行くものと予測しています。

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編集後記

1月の米消費者物価指数(CPI)が+7.5%と1982年以来、40年ぶりとなる伸び率でした。1982年、私は高校生で株取引を始めたばかりの頃で、日経平均株価は7,000円台でした。この当時、米国のFFレートは確か7.5%くらいだったと思います。日本の長期プライムレートは8%以上ありました。

インターネットも無い時代、証券会社とのやりとりも電話か店頭での対面です。Eメールもありませんから紙で印刷された文書は郵便でした。口座開設に本人確認や個人情報という概念も無く、申込書を適当に書いて郵送すれば簡単に口座が作れたものです。銀行も犬の名義で口座を開設してくれるおおらかな時代でした。

さて、新型コロナがスタートした2020年1月はFFレートは1.75%です。そして、パンデミックが本格的になった3月から0.25%に引き下げられ、以来2年間ずっと0.25%です。金融市場がバブル化し、インフレ率が上昇してもFRBは金利を操作せず量的緩和を続けてきたのです。その結果がCPI+7.5%で、FRBは今さら慌てて金利を上げようとしているのです。CPI+7.5%でFFレート0.25%という異常事態、この状態を正常化するための金融引き締めです。ゴールドマンサックスは25bp×7回の利上げを予想しています。これで1.75%です。50bp=0.5%×10回でも5%です。この異常事態を正常化することがどれだけ困難で痛みを伴うものかがお分かりいただけると思います。

ウクライナ情勢の緊迫を受けてWTI原油先物価格が、およそ7年4ヶ月ぶりとなる1バレル94ドル台まで上昇しました。産油国にとっては久しぶりのバブルでしょう。こうなってくると石油ブローカーも活発化します。私のところにも原油取引の相談が増えてきました。原油価格はWTIの先物やICEのブレント、プラッツドバイなどの価格の指標がたくさんあります。長期間のターム契約なら原産国(販売元)が定める価格公式に基づいて取引価格が決定します。これがフォーミュラ価格です。

ただし、全ての原油がフォーミュラ価格で取引されているわけではありません。例えばサウジアラビア産の原油はサウジアラムコという国営の石油会社から供給されます。このサウジアラムコから供給される原油にもいろいろな価格が存在します。1バレル90ドルの原油もあれば70ドルの原油もあるのです。もちろん同じ原油です。要は相対取引で納得する価格が取引価格なのです。なぜこのようなことになるのかよいうと、原油の販売権利者=アロケーションホルダーがたくさん存在していて、安くしてでも自分の原油を売りたいと考えるからです。サウジアラビアは王族と名のつく人が7,000人以上いると言われています。そのうちの何割かはアロケーションホルダーで、原油が食い扶持という王族も多数いるのです。昔の武士が何百石という米の支給で身分を保っていたのと似ていますね。

このアロケーションホルダーから安い価格で原油を買い、転売益を儲けようというのが石油ブローカーです。もちろん、石油商社も参入してくる分野ですが、日本の大手商社などは絶対に手を出しません。何より日本の場合は安定供給が一番の条件ですから、高くても安心なサプライヤーからしか買いません。それに、価格破壊をしてしまうと元に戻すことが困難になるという側面もあります。もし、ENEOSが出光より安い原油を取引すれば、出光も競争せざるを得ません。それが恒常化してしまうと、供給が不安定になった場合に市場を混乱させることになります。そしてなにより、石油は21世紀になった今でも戦略物資であるということを忘れてはいけないのです。

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猫組長TIMES 次号は2月16日です。

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