カルト化するマネーの新世界

新型コロナウイルスが本当に破壊しているのは「健康」ではない。人間社会を根底から支える「信用」だというのが私の考えだ。ソーシャルディスタンスとは「隣人が感染しているかもしれない」という「不信の距離」なのである。
NEKO TIMES 2021.08.20
誰でも

みなさんこんにちは、猫組長です。

カルト化するマネーの新世界 元経済ヤクザが明かす「黒い経済」のニューノーマルが講談社より発売されました。21世紀の疫病、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックは世界秩序や社会構造を大きく変えました。目に見えないウイルスの猛威は物理的な暴力より凄まじい破壊力を持って人類に襲いかかったのです。

暴力が破壊した「信用」と膨張する緩和マネー

2020年1月から始まった人類と感染症との新たな戦い、それが新型コロナウイルスの感染拡大です。同年1月31日、感染の始まった中国武漢から本国へ帰国する米国人195人が乗る飛行機には窓が無く、乗組員は防護服という異様な光景でした。この様子を見た時、これは大変なことになると感じました。この時点で米国は相当な情報を得ていたのだろうと思います。

その後、新型コロナウイルスの感染が拡大していくと、翌2月24日米国市場発の世界同時株安が起こります。誰しもが信用収縮からの金融不安を予想した出来事でした。しかし、FRBをはじめ先進国中央銀行や政府は、2008年に起きたリーマンショックの経験から素早い対応をしました。流動性を維持するために大量の資金供給を開始したのです。こうして各国が協調して大量な資金供給を実行し続けたことで金融危機は免れました。

大量出血する怪我人に失う量より多い輸血をするという外科的処置が、コロナ禍における資金供給=金融緩和でした。とりあえず失血死しないように輸血しながら根本的な治療をしようという作戦です。やがて、予想以上に長引く治療のため、出血量より輸血量の方が多くなり患者は元の体重より太ってしまいました。これが現在の金融市場です。

過剰な金融緩和もコロナ禍から経済危機を免れるためには必要な行為でした。しかし、その副作用とも言える現象が起こりました。大量に供給された資金が金融市場へ過剰に流れ込むことで、企業価値や資産価値が過剰評価され始めたのです。これが過剰流動性=バブルです。さらに、それまで投資など興味の無かった層まで金融市場に参入するようになり、株式市場を不安定にさせました。

コロナ禍に生まれたマネーカルト

信用の収縮を防ぐための手段が信用の過剰な膨張を生みました。人間の欲望は正直です。他人が投資で儲けていたら、自分も同じように儲けたいと思うのが人間です。その欲望と過剰に供給された資金は、暗号資産や様々なハイリスクの金融商品にまで流れ込みました。米国では個人投資家がSNSで結託し市場を混乱させたり、巨額なレバレッジ取引で金融機関に多大な損失を与えたりと話題は尽きません。

FIRE(Financial Independence, Retire Early)ムーブメントもコロナ禍で沸いたカルトの一つです。経済的自立と早期リタイアでお金から自由になろうという思想のようですが、その実態は正反対で、お金の奴隷になるようなものです。不労所得での生活を目指し、豊かさを放棄する若者が哀れです。カルト化するマネーの新世界は、新型コロナウイルスによって激変した経済と、カルトとも言える経済事象を投資の視点から書いたものです。

<b>Millais, John Everett </b>

Millais, John Everett 

インカ帝国滅亡の原因

画像はジョン・エヴァレット・ミレイ作「ペルーのインカ国王を捕らえるピサロ」です。1532年にスペインの征服者(コンキスタドール)フランシスコ・ピサロはインカ帝国=現在のペルーに僅か168人の兵を率いて侵攻します。インカ帝国の皇帝アタワルパ率いる8万の兵。ピサロはその圧倒的な大軍を打ち破り皇帝アタワルパを人質として捕らえます。

168人のピサロ軍が8万の大軍に勝ったのはテクノロジーの差によるものでした。鉄製の鎧に銃や剣を装備した近代的装備のピサロ兵に対し、アタワルパの兵は布や木で作られた装備で戦ったのです。その上、ピサロ軍は馬に乗った兵まで投入していました。アタワルパの兵は初めてみる大きな動物や銃に恐れ慄き混乱します。圧倒的なテクノロジーの差、文明の差を前に、アタワルパの軍は壊滅し皇帝アタワルパは捕らえられてしまったのです。

人質となった皇帝アタワルパは身代金として大量の金銀をピサロに渡しますが、結局処刑されインカ帝国は滅亡してしまいました。

情報の重要性

ピサロと皇帝アタワルパの勝敗を決した最大の原因は情報でした。ピサロは戦場となるペルー北部カハマルカの地理や皇帝アタワルパの動向を調査していたのです。一方、皇帝アタワルパは、ピサロの一行が友好的な面会を求めているとの誤情報を得ていたため油断していました。もし、皇帝アタワルパがピサロについての詳細や計画について正確な情報を得ていたら結果は違っていたかも知れません。

現代社会においても情報は大きな価値を持ちます。公開されてしまえば価値を失う情報も、他者より早く得ることで価値あるものになります。大多数が知らない情報を知ることも希少な価値となります。

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編集後記

TOKYOオリンピックも閉幕し、次は24日から始まるパラリンピックです。当初は開催が危ぶまれていたオリンピックですが、始まってみると世界中が熱狂するあっという間の17日間でした。一瞬のために数年数十年と努力を重ねてきたアスリートたちの戦いは、激しくも美しくとても感動的でした。

さて、新型コロナウイルスによる感染の拡大が止まりません。日本全国では1日の新規感染者が25,000人を超えました。人口の密集する都市部では当然ですが感染拡大の速度が早く、東京都だけでも1日5,000人以上の新規感染者が確認され医療体制は逼迫しています。

私の周りでも新型コロナウイルスに感染する者が急激に増えてきました。その中でもデルタ株による感染をした2人は重症化し、うち1人は未だ集中治療室から出られません。ワクチンが普及してきたとは言え、新型コロナウイルスによる感染拡大は確実に新たなフェーズに突入したと思います。

先日も知人が発熱し新型コロナウイルスによる感染が疑われる事態がありました。ところが、医師の診察を受けようにもすぐに受診できる医療機関がなく、やむなく緊急往診に対応した医師を呼ぶこととなったのです。その代金はPCR検査も含めて12万円というものでした。自由診療となるので仕方ありませんが、若い人などは躊躇する金額だと思います。今まで当然のこととして受けられていた医療が受けられない、それが今の現実です。

ワクチンが普及した一部の国では、その効果を高めるために3度目の接種=ブースターを始めようとしています。自国民の安全を優先するのは国家として正しい判断ですが、公衆衛生の観点から考えると疑問に思えます。新型コロナウイルスは国家や社会構造を変えただけでなく格差の拡大も進行させました。ワクチン接種の機会が得られる日本に住んでいるだけでも幸運です。とは言え、感染しないことが重要ですので、皆さんも細心の注意を払って生活して下さい。

猫組長TIMES次号は8/22 「猫組長の相場見通し」です。

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