ソニーの電気自動車は次の”ウォークマン”になるのか?ー黒船に対抗する日本メーカー

ソニーは1月初旬、ラスベガスで開催されたエレクトロニクスの展示会「CES 2022」で、同社の先端技術を利用したEV(電気自動車)「VISION-S」の市場投入計画を発表しました。テスラやアップル、国内自動車メーカー欧米各自動車メーカーがしのぎを削るEV開発、これからどのように動いていくのでしょうか。
NEKO TIMES 2022.01.21
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こんにちは、NEKO PARTNERS岩倉です。毎週金曜のニュースレターではビジネスや経済のトレンドについて解説していきます。

ソニーは1月初旬、ラスベガスで開催されたエレクトロニクスの展示会「CES 2022」で、同社の先端技術を利用したEV(電気自動車)「VISION-S」の市場投入計画を発表しました。米国・欧米自動車メーカーも同展示会で発表を行っており、動向から目が離せません。

<本日のトピック>
・ソニーの電気自動車(EV)への期待
・各国電気自動車メーカーの動向
・機会をうかがう日本の部品メーカー

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ソニーの電気自動車(EV)への期待

少し時代をさかのぼってみよう。1979年にウォークマンが誕生した。「音楽を携帯する」という世界初のコンセプトは生活者を観察したことから生まれた。当時からソニーはライフスタイルに寄り添ってイノベーションを起こしていたのである。

そして、2020年、ソニーの電気自動車は同社の先端技術を結集するコンセプトカーとしてCESで発表された。高度な運転支援を実現するためのイメージング・センシング技術、AI(人工知能)、通信・クラウド技術、そして社内のエンターテイメントを充実させるためのオーディオ技術、まさにALLソニーを表した製品ともいえる。

2021年、このコンセプトカーの量産化の検討を発表した。自動車メーカではないソニーに勝ち目はあるのだろうか。たしかに、自動車開発自体はオーストリア・マグナ・シュタイア社(独自ブランドを有しないOEMに特化した自動車製造企業)とパートナーシップを結び進め技術的な部分を補完している状況である。

ところで、CESで吉田社長は電気自動車のビジネスについて「リカーリング(継続型)ビジネスになる」と話したと報道されている。しかしながら、自動車をモノではなくサービスとして考えることは電気自動車を考える上では当たり前になっているだろう。ソフトウェアをアップデートすることができるからだ。ここを極めていくだけでは先行企業には負けてしまうだろう。

この点、ソニーグループという企業体で考えてみると面白い気がする。ソニーグループはいまや、電子機器だけではなく、エンターテイメント・金融など様々な事業を要するコングロマリットだ。自動車の購入体験、利用体験までを含めた生活者目線の体験を生み出した時、aiboやPlaystationを超えた製品になるのかもしれない。

電気自動車業界の動向

【米国】様々な電気自動車メーカーが生まれているが、過熱感気味といえそうだ。ニコラリビアンなどの新興電気自動車メーカーにはネガティブな報道が続いている。一方で大手自動車メーカーを中心としたEVへの投資は加速している。南部州を中心に韓国企業(部品メーカー)の進出が相次いでいることに注目したい。(JETRO:周辺地域のEV関連投資動向

【欧州】米国テスラが「ギガファクトリー」の操業に必要な書類を提出した。複数の推計によると同工場の生産能力は週1万台にのぼるという。また、フォルクスワーゲンとボッシュは欧州でのEV向けバッテリー向上立ち上げを支援するサービスを発表した。2035年に向けた本格的なEVシフトの夜明けの時期といってもよいだろう。

【中国】中国汽車工業協会は、2021年の電気自動車の新車販売台数は前年比2.6倍の291万台と発表した。政府主導の普及促進施策により、新車販売全体の8割を電気自動車が占める。また、世界における存在感も高めている。大手メーカー比亜迪(BYD)は米国Nuroとともに自動運転技術をもつ電気自動車の配送車両を発表、またアフリカ(ケニア)でも現地スタートアップに協力をしている。

機会をうかがう日本の部品メーカー

曙ブレーキ(TYO:7238)は米国市場に加えて、中国市場への展開を加速させる。2024年3月期までに中国事業の売上高に占める現地車メーカー向けの比率を20%程度に高めるという。金属調の加飾フィルムを扱うウェーブロック・アドバンスト・テクノロジーはトヨタ、GM、フォードなどへの納入実績をかわれ、リビアンのRT1で利用するフィルムに採用されている。

経済産業省は「自動車産業『ミカタ』プロジェクト」という補助金事業を開始している。電気自動車の普及により従来型の製品の需要が先細りすると考えられる中、自動車部品メーカーの新技術開発や業態変更を支援する。

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編集後記

コロナ禍からの景気回復期待で需要が増えるとの思惑から原油先物価格が上昇しています。現在は1バレル84ドルまで落ち着きましたが、ニューヨーク市場では87.7ドルまで高騰しました。ロシアがウクライナへ侵攻する事態となれば、米国の金融制裁でロシア産原油のドル建て決済が不可能となり、さらなる高騰になるでしょう。

私の経験上、原油価格が75ドルを超えたあたりから急にオイルブローカーが活発になります。あちらこちらかで市場価格より安い原油が取引され始めます。原油の販売権者であるアロケーションホルダーがディスカウントしてでも自分のオイルを売ろうとするからです。コストと利益を考えたら、原油価格がある程度の水準にまで達しないとディスカウントされたオイルも動きません。その目安が1バレル75ドルくらいなのかなと思います。

原油取引は1年とか2年とかの継続的なターム取引が主流です。ターム取引に対し、都度決済の単発や3ヶ月程度の短期取引がスポット取引になります。スポット価格の方がかなり割安な価格ですが、こちらはスーパーマーケットの特売品と同じで、安定供給の観点からは敬遠されがちな取引と言えます。

ディスカウントオイルの取引と言えども原油取引ですから、その決済金額は相当な額になります。安定供給が使命の大手商社はディスカウントオイルには手を出しません。そこでディスカウントオイルを扱うのはオイルブローカーや資金力の乏しい小規模な商社などになります。そこで一番のネックになるのが決済ということになります。ターム取引となれば1年間、2年間といった長期にわたり、買手側から売手側に何度も支払いが発生します。その決済に利用されるのがカルロス・ゴーンで有名になったSBLC=スタンドバイエルシーです。資金力のある商社ならLCや都度決済で対応できますが、そうでない場合、売手も決済取り扱い銀行も買手側の支払能力を担保する必要があります。

SBLCは発行から365日+1日の366日間が有効期間で、手続きさえすればロールオーバーが可能な債務保証です。365日間に行われる決済を包括的に保証する極度額の設定されたローン契約ということになります。SBLCはリースもできますし、額面の50%ほどで買うこともできます。取引銀行で新規に発行することも可能です。問題はSBLCを利用する信用力若しくは資金力があるかどうかです。1億ドル(約114億円)のSBLCなら8億円ほどで発行できますし、1ヶ月7千万円ほどでリースすることもできます。

しかし、1億ドルのSBLCが利用できる状態にあったとしても、受け手側と取り扱う銀行が使用する側に与信しなければ1円の価値も持ちません。これがクレジットです。個人のクレジットカードは発行されたら与信枠の範囲でクレジットカード会社が都度立替払いをしてくれます。信用=クレジットの無い顧客にはクレジットカードは発行されません。SBLCは移転が可能なクレジットカードと同じです。信用の無い者に移転しても使用が不可能なのです。ただし、国際金融取引の世界ではこのクレジット自体もリースが存在します。信用=クレジットの不足する利用者にクレジットを貸して(クレジットライン)利用料を取るビジネスです。保証会社や保証協会の事業に似ていますね。

信用=クレジット=お金という考えが国際金融取引の第一歩です。

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猫組長TIMES 次号は1月23日です。

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