解説|騒がしい関税、静かな金利転換
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今週は関税を巡るトランプ政権の動きが、世界の貿易関係を大きく揺さぶった一週間でした。7日に発動された新たな関税措置では、日本製品への負担が増加しましたが、事前の両国間協議の内容について解釈の違いが表面化しています。日本側は一定税率以下の品目のみが対象との理解でしたが、米国側はすべての品目に一律で税率を加算するとの立場を示し、食品を中心に大幅な負担増となりました。
加えてトランプ大統領は、半導体分野に対して極めて高い関税を導入する方針を表明しました。ただし、米国内に製造拠点を設ける企業については例外扱いとする条件を示しており、主要なアジア系メーカーの多くはこの条件をクリアする見込みです。(ブルームバーグ)その一方で、新興国グループに対してはより厳しい措置を取る姿勢を鮮明にし、特定の国々には極めて高い税率を適用しています。
注目すべきは、各国が貿易協定で一定の合意に達したにも関わらず、米国側が継続的に新たな圧力をかけ続けていることです。同盟国を含む多くの国々が、協定内容の再解釈や新分野への関税導入により、絶えず交渉を求められる状況が続いています。
こうした貿易環境の不安定化にも関わらず、株式市場は上昇基調を維持しました。背景にあるのは雇用市場の軟化を受けた金融緩和期待です。米国では雇用関連指標の悪化によりFRBの政策転換観測が強まり、日本でも日経平均が心理的な節目を上回る水準で推移し、この金融緩和期待と企業業績の改善が市場を下支えしています。しかし債券分野では、日本の金利環境変化により大手保険会社の運用損失が大規模に拡大するなど、対照的な展開となっています。(ブルームバーグ)
今週のニュースレターでは、貿易政策の先行き不透明感と雇用悪化による金融政策変化が並行して進む中、企業活動から雇用情勢、消費動向まで、この複雑な環境変化が日本経済の各分野にどのような影響を与えているのかを見ていきます。
<本日のトピック>
・関税合意と生産拠点の大移動
・雇用なき景気維持の実態
・賃金上昇でも冷える消費
・利上げと緊縮の同時進行