日銀金融政策決定会合を受けてマーケットの振り返りと今後の展望

1月18日の日本市場は前日米国市場が休業であったこともあり、先行きの指標として日銀による金融政策決定会合が最重要視された1日となりました。発表内容を振り返るとともに発表後の値動きから、今後のマーケットの展望を考察していきたいと思います。
NEKO TIMES 2022.01.19
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第21回の配信では

日銀金融政策決定会合を受けてマーケットの振り返りと展望】

をお伝えしていきたいと思います。

また、記事の最後には猫組長による編集後記があります。今回も最後までお読みください!

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◆日銀金融政策決定会合の振り返り

まずは黒田日銀総裁の主な発言をまとめましたのでご覧頂ければと思います。 

「景気の現状は感染者数の影響が和らぐもとで持ち直しが明確化していく」    「引き続き2%物価目標の実現を目指し、必要まで現行の緩和を継続」      「現在の金融政策を修正する必要は全くない」                 「様々な物価リスクは内在しているものの、物価が2%に向けて着実に上昇しているわけではない」                                 「仮に賃金上昇が伴わないままに商品価格を主因として物価高になったとしても2008年のように一時的に留まる」                           「金利の引き上げは想定していない」                      「自身の任期に合わせて金融政策の正常化を議論するつもりは全くない」

日銀の金融政策決定会合後の値動きは、米国長期金利の急上昇を受け、米国先物を中心に軟調であったことから、日本市場も弱い展開ではありましたが、発表内容自体はある程度ポジティブに捉えて良いのではないでしょうか。基本的にはこれまでと何ら変わりはないと発表しただけではありますが、一部メディアで日銀による利上げ観測も出ていたことで、不変であることが市場に安心感を与えたように思います。しかし、いつものように国内要因ではなく、外的要因で午後にかけて上昇幅を失ってしまった点は、日本市場の弱さを露呈した形となりました。

◆日銀金融政策決定会合当日の値動き

1月18日 日経平均 1分足チャート

SBI証券

SBI証券

1月18日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比-76円、2万8257円と反落しました。前日の米国株市場が休場であったことから、18日に公表される日銀の金融政策決定会合がマーケットのメイントピックとなりました。前場取引終了後に「現状維持」が発表され、米国、欧州を中心に世界的な金融引き締めモードの中、日銀が政策修正の動きを見せなかったことは、マーケットに安心感を与えるポジティブ材料となり、後場寄りから一段高となりました。しかし、そこから2万8700円近くまで上昇したのも束の間、あれよという間に値を消し、13時を過ぎる頃には日経平均はマイナス圏に突入しました。

日銀の政策決定会合は発表後にポジティブに反応したのにも関わらず、なぜ午後から急激に値を下げたのか分からない方も多かったのではないでしょうか。

その理由としては、米長期金利が再度1.8%台まで上昇し、債券市場に不安心理を生じさせたこと、米国株先物が長期金利の上昇を要因として下落していたことなどが挙げられますが、これらは後付けの理由であり、1番は今の全体相場の弱さが全てでしょう。

また、金融政策決定会合後大きく値を下げたのは金融、保険セクターでした。     これは14日にロイターが関係者の話として、日銀が利上げに関する議論を行っていると報じたことが大きな要因でしょう。内容としてはFRBなど、利上げを検討する中央銀行が増えていることや、国内でも物価上昇圧力が強まってきていることを受け、日銀の政策担当者が、2%の物価目標の達成前でも、利上げを示唆するか議論していると報じられたことで、金融政策変更を見越していた一部の投資家による失望売りだと考えられます。

来週の1月25~26日には米国のFOMCを控えており、金利の行方を見ながら薄商いかつ弱い展開が予想されますが、FOMC後の日本市場、米国市場の見通しを考察していきたいと思います。

◆今後の行方を左右する重要なFOMC

米国株をお持ちの方はもちろんのこと、日本株へ投資されている方も来週のFOMCは今後の市場の行方を左右する重要なものになるので要注目です。

私はFRBが経済・株価よりもインフレを退治することに本腰を入れ始めた時点で、金融政策は市場の要諦よりもかなり厳しいものになると考え、3月からの最低でも0.25%の利上げを年3〜4回行うだろうと当時では少しタカ派的な見解を示しておりました。マーケットとしてもつい数週間前までは、3月に利上げを開始するかどうかが議論の中心になっておりましたが、この数週間の中で、雰囲気はガラリと一変しました。現在では、3月利上げは既定路線であることはもちろんのこと、年5回の利上げ0.25%を上回る利上げすら意識され始めております。より強い利上げ観測につられる形で、長期金利も直近高値であった1.8%を突破し2%に迫る勢いで急上昇しております。現在の株価が米国を中心に下げ止まらず、軟調に推移しているのも週明けのFOMCが株式市場にとってかなり厳しいものになることを折り込みにいっているからに他なりません。

ハイパーグロース株を中心に軒並み大きく上昇していた相場は、昨年の秋頃には既に終了しており、時価総額の大きなハイテク株をも巻き込んでいくのかが今後の焦点になります。

◆株式市場は今回のFOMCを何とか耐えることができるのではないか

前述したように、現在のマーケットは年5回の利上げや0.25%を上回る利上げすら意識されるほど、タカ派色の強い状況になっております。しかしそういった状況はパウエルさんとしても市場をコントロールしやすいのもまた事実であるということを再度頭に入れる必要があるように思います。猫組長TIMESでも何度もお伝えしているように、特にここ半年間はパウエル相場といって良いほどに、パウエルさんの市場との対話が支えとなってきた相場です。バーナンキーさんの時のように市場との対話が取れていなければ、金融緩和終了アナウンスのタイミング、仕方だけでマーケットは多少なりとも崩れていたでしょう。

今回のFOMCは市場がFOMCのアナウンスよりも先にかつ、強めに金融縮小を折り込みにいっており、FOMCからマイナスのサプライズが出にくい点、パウエルさんとしても様々なアナウンスをしやすい環境にあることは、悲観的なムードの漂う中、唯一のポジティブ材料ではないでしょうか。

もちろん大前提としてこれまでの金融縮小とは異なり、かなり厳しいものになることは念頭に入れておかなければなりません。米国の高水準のインフレを退治するのは到底簡単なことではないからです。

しかし、これまでは将来的に悪影響を与えるネガティブなニュースであっても市場が想定していたものであるならば、ポジティブに捉え、株式市場は上昇を続けてきました。過去の経験則でいくのであれば、ネガティブサプライズさえなければ上がらなければならないのです。そこが今回崩れてしまうのかに注目すべきであると考えております。

株式市場はこれまでと異なった動きをすること、先行きの見えないものを1番に嫌います。これまでと違う動きをした場合には、ここまで相場を支えてきた楽観論が全て崩壊していってしまい、大きな波乱が生み出されることでしょう。

来週25日に控えるFOMCの発表後の値動きが今後の株式市場を左右するものと思っておりますので、来週はその辺りを考察しながら皆様にお伝えしていけたらと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

引き続き猫組長TIMESをよろしくお願い致します。

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編集後記

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から27年が経ちました。あの日、突き上げるような衝撃と爆発音で体が宙に浮き、目が覚めました。その直後、強い横揺れがしばらく続きやがて静かになったのですが、何が起こったのか理解するのに時間がかかりました。最初は戦争が始まってミサイルが飛んできたのか、若しくは航空機が近所に墜落したんじゃないかと思ったくらいです。

そして、阪神・淡路大震災から16年後の2011年3月11日、東北地方で東日本大地震が発生します。マグニチュード9.0は日本国内観測史上最大の地震で、津波に放射能漏れと複合的な大規模災害でした。この二つの震災両方に被災した知人がいます。岩手県大船渡市出身のA君です。彼は19歳の大学生時代に神戸の友人宅を訪ねた翌日、阪神・淡路大震災で被災しました。この時彼は、生涯で1度くらいは大きな震災に遭うこともあるだろうくらいに考えていたそうです。

その後、A君は東京の大学を卒業してから外資系の金融機関に就職しました。それからリーマンショックの2008年まで朝から夜中まで仕事に明け暮れる毎日でした。リーマンショックで金融市場が混乱し世界的な不況が訪れますが、A君はオプション取引と未公開株で相当な資産を作りリタイアします。A君は会社を辞めてから1年半ほどかけて世界中を旅して回りました。帰国してからのA君は主に米国企業へ投資する個人投資家となったのです。2011年の3月になって、お父さんが体調を崩し入院したためその見舞いに大船渡へ帰省します。その2日後、東日本大地震が発生しました。A君の実家も津波でなくなりましたが、家族は父親の入院する内陸部の病院にいたので皆んな無事でした。

A君はこの2つの震災に遭遇したことを「不幸の見本みたいな人生」と笑いながら話ます。彼は本当に不幸でしょうか?私はそうは思いません。それより、2回も大きな震災に遭いながら怪我もなく無事でいられたことは大きな幸運であったと思います。生きてるだけで丸儲けとはこのことではないでしょうか。

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