今週の相場見通し YCC=イールドカーブ・コントロール/長短金利操作)の修正

7月FOMCも無難に通過し経済統計も堅調な米国です。国内では日銀がYCC=イールドカーブ・コントロール/長短金利操作)の修正を決定、相場には一時的な混乱が見られました。
NEKO TIMES 2023.07.30
誰でも

今週号トピック

ニューヨーク市場サマリー

東京市場サマリー

日銀ショック

USD/JPY動向

FOMCとインフレ鈍化

ダウ平均株価見通し

日経平均株価見通し

編集後記

ニューヨーク市場

24日:ユーロ圏7月製造業PMIが予想を下回り、シカゴ連銀全米活動指数が悪化したものの、7月製造業PMIは改善。本格化する企業決算への期待もあって米主要株価指数は寄り付き後から上昇、ダウ平均株価の上げ幅は一時230ドルを超える場面もありました。ダウ平均株価終値は△183.55の35,411.24ドル

25日:IMF(国際通貨基金)が世界のGDP見通しを2.8%から3.0%に上方修正、景気先行きへの安心感が広がりました。スリーエム:MMMやゼネラル・エレクトリック:GEの決算が予想以上となり、ダウ平均株価は12営業日連続で上昇しました。ダウ平均株価終値は△26.83の35,438.07ドル

26日:FOMC(米連邦公開市場委員会)は想定どおりに25bpの利上げ、波乱もなく無事に通過しました。昨日引け後に発表されたアルファベット:GOOGLの決算が好感されたことも、相場を支えました。ダウ平均株価は一時130ドルほど下落する場面も見られましたが、パウエルFRB議長の会見後に買い優勢となり13日連続の上昇。ダウ平均株価終値は△82.05の35,520.12ドル

27日:ECBが25bpの利上げを決定、欧州でも利上げサイクル終了が意識されました。米1QGDP、個人消費はともに予想以上、コアPCE価格指数は予想以下となり、強い経済統計+インフレ減速で利上げ継続の観測、ダウ平均株価は一時300ドルを超えて下落しました。13連騰の高値警戒感と利益確定売りも相場の重石になりました。ダウ平均株価終値は▼237.40の35,282.72ドル

28日:6月PCEコアデフレータは前月比が予想どおり、前年比予想以下とインフレ減速が示され、利上げ継続への懸念が後退しました。昨日引け後に発表されたインテル:INTCの決算が予想を上回ったことも好感され、幅広い銘柄が買われる展開でした。ダウ平均株価終値は△176.57の35,459.29ドル、SP500は△44.82の4,582.23ポイント、NASDAQは△266.55の14,316.66ポイント

東京市場

24日:日銀の緩和政策維持観測で1ドル141円台後半に円安が進行、輸出関連を中心に幅広い銘柄が買われました。SOX(フィラデルフィア半導体株指数)が上昇したことで、値がさ半導体銘柄も物色され、日経平均株価の上げ幅は一時500円に迫りました。日経平均株価終値は△396.69の32,700.94円

25日:FOMC(連邦公開市場委員会)、日銀の金融政策決定会合を控える東京市場は様子見ムード。主要企業の4~6月期決算発表を見極めたいとの思惑から、積極的な取引は見られませんでした。日経平均株価は一時190円を超えて下落する場面もありましたが、上海・香港市場の上昇が相場を支えました。日経平均株価終値は▼18.43の32,682.51円

26日:日本時間27日深夜にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表を控え、様子見ムードの展開でした。外国為替市場で円相場が円高・ドル安が進んでいることも相場の重石となりました。日経平均株価は一時190円を超えて下落する場面もありましたが、32,500円水準では買い旺盛でした。日経平均株価終値は▼14.17の32,668.34円

27日:FOMC(米連邦公開市場委員会)が無難に終え、追加利上げ観測が後退したことで安心感が広がりました。一方、国内では日銀金融政策決定会合前の様子見ムードから、日経平均株価は一時160円超下げる場面もありましたが、売り一巡後は持ち直しプラスに転じました。日経平均株価終値は△222.82の32,891.16円

28日:金融政策決定会合でYCC=イールドカーブ・コントロール/長短金利操作)運用の柔軟化が発表されて円高株安となりました。日経平均株価は後場に入り44円安まで持ち直したものの、その後850円超下落する場面も見られました。日経平均株価は32,000円が意識されると買い戻しが旺盛でした。日経平均株価終値は▼131.93の32,759.23円

***

日銀ショック

日銀は金融政策決定会合でYCC=イールドカーブ・コントロール/長短金利操作)の修正を決定しました。運用柔軟化により長期金利の上下0.5%程度の許容変動幅を「めど」として、経済・物価情勢次第で0.5%〜1%を容認するという内容です。大方の予想を裏切る突然の修正はまさにサプライズでした。

Bloomberg

Bloomberg

日銀会合結果を受けて債券市場では長期金利が急上昇、一時0.575%と従来の上限0.5%をあっさりと突破しました。結果を受けて東京市場の日経平均株価は乱高下し、一時850円超下落する場面も見られました。外国為替市場ではUSD/JPYが一時138.05円水準まで下落、日銀ショックと言える展開でした。

日銀がYCC=イールドカーブ・コントロール/長短金利操作)の修正を決意した背景には「物価上昇」と「長期金利上昇圧力」があります。消費者物価の上昇が日銀の想定を超えており、2023年度の物価予想を大幅に上方修正したことへの反省も踏まえたものと思われます。

日銀の政策修正が発表された直後には、市場はYCCの事実上の撤廃→金融緩和終了への道筋と受け止めたようでした。しかし、その後の植田日銀総裁が金利操作の柔軟化は「金融緩和の持続性を高めるため」と発言すると、市場は落ち着きを取り戻しています。また、植田総裁は長期金利について「0.5%を仮に超えていった場合、機動的にオペを打つ」と金利上昇への警戒感も表しています。

日銀は主要各国の中央銀行で唯一、金融緩和を継続してきました。日本の長期金利が上昇するとなれば、日本への資金回帰・資金流入が起こることになります。そうなると、海外債権などに投資された国内資金およそ530兆円は、再び日本国内へシフトする動きが加速します。海外勢の資金流入も増えることになりますから、国内の投資環境にはポジティブでしょう。一方、資金流出となる他国の経済環境にはネガティブな要素となります。

USD/JPY動向

NIKKEI

NIKKEI

週明け24日には141.80円水準まで上昇していたUSD/JPYですが、日銀の政策修正発表で一時138.05円水準まで下落しましたが、その後急反発、141.16円水準まで戻しています。これは、植田日銀総裁による「今回の決定は金融緩和の持続性を高めるための措置」との発言から、当面は追加的な金融緩和政策の変更が行われることが無いとの観測によるものです。

日銀のサプライズによって、一時138.05円水準まで下落したUSD/JPYですが、金融緩和そのものが修正されるものではないとの判断から急速に戻しています。テクニカル的に見ると75日移動平均線にサポートされ、25日移動平均線がレジスタンスとして機能していることが分かります。一目均衡表の雲下弦が28日安値138.05円を支え、終値141.15円水準はちょうど雲上限を上抜けようとする位置になります。

TradingView US10Y

TradingView US10Y

FOMC(米連邦準備理事会)で25bpの利上げが決定されたこと=市場予想どおりであったこと、パウエル議長が会見で追加引き締めの可能性を排除しなかったこと、堅調な経済統計が続いたことなどで、米10年最利回りは再び4.00%台まで上昇(現在は3.95%)したことも、一方的な円高進行を阻みました。

来週のUSD/JPY動向は、米7月ISM製造業・非製造業景況指数、米7月ADP雇用統計 、米6月JOLTS求人件数、米7月雇用統計が重要な指標になります。これら経済統計が引き続き強い数字となれば、追加利上げが意識され米2年債・10年債利回り上昇→ドル買い円売りとなるでしょう。目先は7月21日に押し返された25日移動平均線の141.65円水準(7月21日時点では141.95円水準)が焦点です。このラインを上抜けられれば143.00円が次のターゲットになるでしょう。しかし、日銀がYCC=イールドカーブ・コントロール/長短金利操作)の修正をしたことは、中長期的に見れると円安進行の終了に繋がることになります。短期的な為替の動きは、債権利回りによる日米金利差や米経済統計に影響されると思います。

FOMCとインフレ鈍化

FRB(米連邦準備制度理事会)は、25-26日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)で25bpの利上げを全会一致で決定しました。これにより、FFレート(政策金利誘導目標)5.25%〜5.5%となりました。前回の6月FOMCでは、参加者は年内にあと2回の利上げを実施するとの見通しを示しています。

これであと1回の追加利上げがの可能性があるわけですが、パウエル議長は今後の利上げについては「引き続きデータ重視」と語っています。次回9月のFOMCで利上げするかどうかはデータ次第としており、年内の利下げについては可能性が低いと改めて強調しました。

FFレートが5.25%〜5.5%となりましたが、米経済統計は未だ堅調さを示しています。5月CPI(消費者物価指数)は4.0%、コア指数5.0%から、6月はさらに低下するものと見られています。それでもFRBが目標とする2%にはまだ乖離しており、早期の利下げは可能性が低いと考えられるでしょう。FRBが心配していた賃金インフレについては、賃金の上昇ペースがようやくインフレ率を上回り、失業率は3.6%と低水準を維持しています。こうした経済情勢からも、パウエル議長の言う「データ次第」で金融引き締めの先行きは流動的でることが窺えます。

ダウ平均株価見通し

NIKKEI

NIKKEI

ダウ平均株価は13連騰で35,500ドル台を回復、14連騰にはなりませんでしたが力強い相場展開でした。現在の35,500ドル水準は、チャートで見る限り大きな壁となりそうです。この水準を上抜けられれば、昨年12月高値の36,500ドルが射程に入りますが、その水準まで伸ばすのは現状で厳しいでしょう。

企業決算の好業績は既に織り込まれていると考えられる上、早期利下げ期待が過剰に反映されていると分析しています。33,500ドル達成感と高値警戒感から、利益確定売りも出る水準にあると見ています。チャートで示してある赤線のゾーンを抜けていくのは難しいでしょう。

今週は、アマゾン・ドット・コム:AMZN、アップル:AAPLの決算がありますが、ハイテク銘柄の企業業績は織り込み済みと考えると、よほどいい数字にならなければポジティブな材料にならないと思われます。 7月ISM非製造業景況指数、7月非農業部門雇用者数変化・失業率など注目の経済統計が発表されます。引き続き堅調な数字が示されるものと見られ、リセッション懸念後退観測と追加利上げ観測が入り混じる神経質な動きになりそうです。

日経平均株価見通し

NIKKEI

NIKKEI

先週の日経平均株価は、7月FOMCと日銀金融政策決定会合が重なり神経質な展開でした。28日には、YCC=イールドカーブ・コントロール/長短金利操作)の修正決定を受け、一時800円超下落するなど混乱が見られましたが、引けにかけて大きく戻しています。結局、先週末455円高い32,759円で取引を終え、32,000円の底堅さを感じられました。

現在はちょうど5日・25日移動平均線が重なるところで抑えられている価格水準になります。FOMCを無難に通過し、日銀のYCC修正はあったものの、当面は緩和政策の継続に変わりは無く、日経平均株価にとっては好環境です。

今週は、米7月ISM非製造業景況指数、7月非農業部門雇用者数変化・失業率、企業決算などが材料となるでしょう。日銀のYCC修正は即座に緩和政策の転換とはならず、株式市場には引き続き好環境が続きます。今週は、米国経済統計やBOE(イングランド銀行)政策金利発表などに影響される相場展開となりそうです。

先週末の一時的な大幅下落からの反発は週明けにも続くと見ています。一旦は33,000円を上抜き、33,500円を伺う展開ではないでしょうか。米経済統計など外部要因に加え、国内主要企業の決算が材料となり、33,000円を超えてからは神経質な動きになりそうです。現状では33,500円を明確に上抜けるエネルギーには乏しく、この水準では押し返されると見ています。

編集後記

みなさんこん日は、猫組長です。

今日も暑い一日でしたね。

木原誠二副官房長官妻の前夫不審死事件について、捜査に関わった佐藤誠元警部補が会見した様子をインドネシアのニュースサイトが報じました。 Tribune newsはインドネシア最大のメディアグループのニュースサイトで、1日4,000万PVの視聴があります。

先月には天皇皇后両陛下がインドネシアを訪問するなど、日本は注目されていますのでこの報道がどう影響するか気になるところです。また岸田政権はASEAN、特にインドネシアとの協力関係強化を目指しており、政府要人のスキャンダルは避けたいでしょう。

その中でも、航空自衛隊から退役するF-15J戦闘機のエンジンをインドネシアに輸出する計画が持ち上がっており、防衛装備品を輸出する際のルール「防衛装備移転三原則」を変更する準備をしています。政権の中枢に「愛人とディズニーランド」「妻が不審死事件で家宅捜索と事情聴取」などスキャンダル塗れの人間がいる国家がどう見られるのでしょう。

さて、文春に実名で登場した佐藤誠元警部補にはあらためて取材依頼を提出しました。会見では、当時捜査に関わり、今も現場にいる仲間を守っている印象が強かったです。もう少し突っ込んで話を聞いてみたいと思いました。

他にも、内閣官房に対し官房長官会見への出席と質問書を送りました。警視庁と、本件の端緒となった女性刑事が所属する所轄署にも取材依頼を提出しています。どのような回答があるのか楽しみです。

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猫組長TIMES 次号は8月2日です。

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